診療時間

診療時間
09:00 - 16:00
16:00 - 19:30

※最終予約枠は終了時間の30分前となります 。

COLUMN

採卵で取れた卵はどのグレードまで利用するのか― 受精卵・胚盤胞グレードの正しい考え方 ―

採卵で取れた卵はどのグレードまで利用するのか― 受精卵・胚盤胞グレードの正しい考え方 ―

採卵後、「取れた卵は全部使えるの?」「どのグレードまで移植や凍結の対象になるの?」と疑問に思われる方は少なくありません。胚のグレードは、不妊治療において重要な指標の一つですが、その意味を正しく理解していないと、不安や誤解につながることもあります。本記事では、採卵後の受精卵や胚盤胞がどのように評価され、どのグレードまで利用を想定しているのかを、専門用語をかみ砕きながら分かりやすく解説します。

1.採卵した卵はすべて使えるわけではない
2.胚盤胞まで育つ過程で起こること
3.胚盤胞グレードの仕組みと評価方法
4.どのグレードまで凍結・利用を想定するのか
5.グレードと妊娠率・染色体異常の関係
6.グレードだけで判断できない現実
7.まとめ

採卵した卵はすべて使えるわけではない

採卵で複数の卵子が取れたとしても、そのすべてが治療に使えるわけではありません。これは不妊治療を始める多くの方が、最初に直面する現実です。
卵子は採卵後、

  • 成熟しているか
  • 受精できるか
  • 受精後に分割が進むか

といったいくつものステップを経ていきます。この過程で、成長が止まる卵や、発育が極端に遅れる胚が出てくることは珍しくありません。
つまり、「採卵数=使える胚の数」ではないという点が、不妊治療の大きな特徴です。

胚盤胞まで育つ過程で起こること

受精した卵は「受精卵」となり、そこから分割を繰り返しながら成長していきます。順調に進んだ場合、5~6日目頃に「胚盤胞」と呼ばれる段階に到達します。
しかしこの途中で、

  • 分割が止まる
  • 成長スピードが極端に遅い
  • 形態が大きく乱れる

といったことが起こり、胚盤胞まで育たない胚も多く存在します。ヒトの場合、20年、30年時間がたってから卵子を使うので、他の寿命が短い動物と違って、多くの胚が育たないことが普通です。

胚盤胞グレードの仕組みと評価方法

胚盤胞まで育った胚は、「グレード」と呼ばれる評価基準で状態を判定します。一般的に用いられるのは以下の3要素です。(グレードというので誤解をうみますが、本当はGardner分類です。)

胚盤胞の大きさ(1~6)

  • 数字が大きいほど、膨らみが進んだ状態
  • 一般的に「3以上」が評価対象になることが多い

胎盤になる細胞(栄養外胚葉:TE)

  • A:細胞数が多く整っている
  • B:中程度
  • C:少ない

赤ちゃんになる部分(内部細胞塊:ICM)

  • A:細胞が多く明瞭
  • B:中程度
  • C:少ない

これらを組み合わせて、「4AA」「3BC」などと表現します。

どのグレードまで凍結・利用を想定するのか

一般的には、

  • 胚盤胞の発育が順調
  • ある程度以上のグレード

の胚を凍結・利用の対象とします。
例えば、CCのように細胞数が極端に少ない胚は、

  • 妊娠を成立させる力が低い
  • PGT-Aなどの検査が技術的に難しい

といった理由から、凍結対象から外されることがあります。また、発育が著しく遅い胚も、妊娠率の観点から省かれることが多いです。
ただし、「ここから下は絶対に使わない」という明確な線が引けるわけではありません。

グレードと妊娠率・染色体異常の関係

胚盤胞のグレードが良いほど、

  • 妊娠率がやや高い
  • 染色体異常の確率がやや低い

という傾向はあります。ただし、これはあくまで傾向であり、強い相関関係があるわけではありません。
実際には、

  • 見た目のグレードが良くても染色体異常がある胚
  • グレードがあまり良くなくても正常染色体の胚

どちらも存在します。そのため、「グレード=すべて」ではないという点が非常に重要です。

グレードだけで判断できない現実

患者さんの中には、
「グレードが悪い=妊娠できない」
と考えてしまう方もいますが、これは正確ではありません。

  • グレードの良い胚がたくさん取れる人
  • グレードの低い胚しか得られない人

には個人差があり、それは年齢、卵巣予備能、刺激方法、遺伝的要因など、さまざまな要素が関係しています。
また、施設ごとに、

  • どこまで凍結するか
  • どのグレードを移植対象とするか

は、過去のデータや方針によって異なります。
基本的に何らかの差別化をしないと移植の順番が決まらないので、Gardner分類を採用しています。

まとめ

採卵で得られた卵は、すべてが利用できるわけではなく、成長の過程で自然に選別されていきます。胚盤胞のグレードは重要な指標の一つですが、それだけで妊娠の可否が決まるわけではありません。グレードが良いほど妊娠率が高い傾向はあるものの、染色体異常との関係は完全には一致しません。大切なのは、数字や評価に一喜一憂しすぎず、主治医とデータをもとに治療方針を考えていくことです。
ヒトの場合、本来、移植して着床しても、妊娠判定まで育つ胚はきわめて少ないというのが真実です。

すべて 不妊治療の基礎知識 お悩みと疑問 研究・学会発表 その他