COLUMN
コラム
2024/01/09
【男性不妊】MESAを希望される方
不妊治療専門クリニックで男性不妊外来を併設している施設は少ない
生殖医療専門医の資格を有する医師は全国に1000名以上おりますが、そのうち泌尿器科医は、70名ほどです。そして、その医師は、関東や関西に偏在しており、都市部に集中しています。地方においては、都道府県あたり0-2名程度しかおりません。(生殖医療専門医 都道府県別一覧:日本生殖医学会HPより 2023年4月1日現在)
そのため、男性不妊を主訴とする治療は、遠方への通院をせざるを得ない状況が多くみられます。
なぜ、閉そく性無精子症にはMESA(精巣上体精子吸引法)なのか?
当院の理事長浅田義正は産婦人科の医師でありますが、精巣精子を用いたICSIによる妊娠例の日本初の報告を行っておりますので、男性不妊外来もクリニックに併設し、男性にも寄り添った治療を行っております。
当院では閉そく性無精子症の場合、MESA(精巣上体精子吸引法)と呼ばれる手術を第一優先選択しています。閉そく性無精子症治療における、もう一つの選択としては、Conventional TESE(精巣精子採取術)と呼ばれる手術がありますが、閉そく性無精子症において、Conventional TESEを行った前向きコホート研究によると、手術後の男性ホルモンの低下は、閉塞性無精子症において生涯認められるという、報告がなされ、閉そく性無精子症にConventional TESEを用いる事にリスクがあることが明らかとなっています。
Eliveld et al. The risk of hypogonadism after testicular extraction in men with various types of azoospermia: a prospective cohort study. Reprod Med Online. 2023. DOI:10.1016/j.rbmo.2023.02.003.
また、Conventional TESEは精巣を切開し組織採取するため、侵襲が大きく、患者負担が大きくなります。
一方、MESAは精巣上体をガラス管(micropipette)で穿刺、精子を吸引するので患者さんへの侵襲性が低く、術後の疼痛も軽度です。また、精子は精巣で作られ、成熟すると精巣上体へ貯められ運動能を獲得しますので、MESAにより精巣上体から採取された精子は、運動性も高くより成熟しているので、理論上は精巣精子より質の高い精子が得られます。
閉そく性無精子症の場合には、造精機能に問題がない場合が多く、成熟した精子がたくさん得られることが多いです。さらに、MESAの有効性が報告される論文もあります。
Hibi H et al. “Microscopic Epididymal Sperm Aspiration (MESA) Should be Employed Over Testicular Sperm Extraction (TESE) Sperm Retrieval Surgery for Obstructive Azoospermia (OA).” Cureus 15.6 (2023). DOI:10.7759/cureus.40659
van Wely, Madelon, et al. "Live birth rates after MESA or TESE in men with obstructive azoospermia: is there a difference?." Human Reproduction 30.4 (2015): 761-766. DOI:10.1093/humrep/dev032
閉そく性無精子にも関わらず、 Conventional TESEを勧める施設はありますが、その理由としてはMESAに必要な技術がない、吸引するための道具(資材)がない、そして経験がないので医師として実施に抵抗がある、というような理由が考えられます。
当院では、精巣上体を強拡大して見ることができる顕微鏡を有し、吸引するための特別なガラス管と吸引資材も持ち合わせております。そして、MESAは1992年より行ってきた経験豊富であり、かつ信頼のおける泌尿器科医がおります。(Hibi H et al. Jpn J Fertil Steril. 2000; 45: 239.)
閉そく性無精子症が疑われる患者さまはまず、当院へお問い合わせください。